昔の搾取子だった人の話をする。
祖父の従妹Aさん、90歳。高級老人ホームで悠々自適。
70年前、戦争が終わった時、20歳。
戦争で父親と兄を失った。
母親は今でいう毒親で、娘のAさんを働かせて自分では何もしなかった。
それだけでなく、当時戦争で男手を失う家庭はいっぱいあって、
Aさんの親戚の女たちも彼女を当てにして家に転げ込んできた。
田舎の本家なので（農家ではない）、どうも母親が親戚にいい顔をしたようだ。
母親や親戚が働かない理由はなく、Aさんが養う理由もないのだが、みな疑問に思わなかった。
20代の時には好き合った人もいたらしいが、当然？母親に引き裂かれた。
Aさんが母親を看取った時には40歳になっていた。
従兄である祖父は、遠方（東京）に住んでいて、Aさん宅の状況を知らなかった。
しかし母親（祖父から見て叔母）の葬式に行って、Aさんが寄生されている惨状を目の当たりにした。
祖父と祖母は
「お母さんも送ったんだしここにいる理由はない。仕事はどこでもできる。東京に出ておいで」と説得した。
祖母は祖父の妻だからAさんとは他人なのだが、同じ女であることでAさんにとても同情したらしい。
Aさんは自分の車だけ持って、東京にやってきた。
（この年代で、田舎で運転免許と自分の車を持っている女性は珍しい。
逆に言えば、それほど仕事が忙しく、母親や親戚の用事で振り回されていたということ）
東京で、祖父母の紹介でアパートを借り、新しい仕事にも就いた。
それからは順調、働いた分だけどんどんお金がたまる。
元々質素な人なので、唯一の趣味は愛車での小旅行。
定年退職後は、これまでの貯金と投資（実は寄生されていた時代から、株をやっていた）で
高級老人ホームへさっさと入った。
祖父母に恩義を感じていて、実子がろくに見なかった祖父母の老後にしっかりつき合ってくれた。
ここ10年ほど、寄生していた親戚の、子や孫連中が、
田舎の家土地（Aさんが出てきてからほったらかし）を狙って、すり寄ってきてうるさいのだそうだ。
私（子供の時から可愛がってもらっている）に
「あの土地もらってくれない？」とか言ってくれるのだけど、
うっかり関わるとあまりにも面倒そうなので、「田舎はヤダなぁ」と笑ってスルーしている。
関係が悪かったとかではなく、みな仕事や嫁ぎ先が遠方で世話ができなかったので、
Aさんがそれなら私に任せて！と言ってくれたってこと。
